くの君に対する判断だ。ぼくはまずそのことをはっきり言っておきたい。」
いきなりそんな文句があった。その文句を見た瞬間《しゅんかん》、次郎は、眼のまえに炎《ほのお》が渦巻《うずま》くような気がして、しばらくはつぎの文字を見ることができなかった。
「この判断には、しかし、たしかな根拠《こんきょ》はない。ただ、先日君をたずねたあとで、直観的にそう判断したまでのことだ。しかし、ぼくだけでは、この直観にあやまりはないという気がしている。むろん、ぼくは、あの日最初から君をそう思って観察していたわけではない。じつは、君に塾内を案内してもらっていた間に、君の道江に対する態度のあまりにもよそよそしいのに気がつき、なぜだろうと思ったのがはじまりで、そのあと、ぼくはかなり注意ぶかく君の一挙一動を見まもっていたのだ。すると、君にはまるで落ちつきがなかった。君は何の原因もないのに、いつもおどおどしていた。かと思うと一人で何かに腹をたてているようにも思えた。君はただの一度も君のほうから道江に言葉をかけなかったばかりか、まともに道江の顔を見ることさえしなかった。ぼくたち兄弟のなかでだれよりも道江に親しかったはずの
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