った。しかし、朝倉先生のように、いつまでたってもじょうずにならないものもあり、また新加入者があるごとに、かならず二度や三度は何かのへまをやったので、爆笑の種は容易につきなかった。
最も多く爆笑の種をまいたのは大河無門だった。かれの不器用《ぶきよう》さは朝倉先生どころではなく、その手振りはまるで拳闘《けんとう》でもやっているような格好であり、その足の運びには、四股《しこ》をふむ時のような力がこもっていた。しかも、かれ自身は、どんなへまをやっても微笑一つもらさず、いつも真剣《しんけん》そのものといった顔つきをしていたのである。
次郎は、その晩は、最後まで、心から愉快《ゆかい》にはなれなかった。みんなが愉快になればなるほど、変にいらだつような気持ちになり、オルガンをひきながら、大河無門の不器用な踊りを見ていても、たださびしく笑うだけだった。そして、その晩の集まりが友愛塾音頭を打ちどめにして終わったあと、自室に引きとってからも、ともすると、大河の踊っている時の顔が眼に浮かんで来た。それは、かれの今朝からのにがい思い出を茶化しているような顔にも思え、また真剣に憂《うれ》えているような顔にも思
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