ます。――みいん――みいん――みいん――」
と、蝉の鳴き声をたて、その声にあわせて、ぶるぶるとからだをふるわせた。声だけは、いかにも蝉らしかったが、からだのほうは、まるで小牛が身ぶるいしているような格好《かっこう》だった。みんな腹をかかえて笑った。その笑い声の中を、大河は、相変わらず、くそまじめな顔をして自分の席にもどり、とぼけたようにあたりを見まわした。それでもう一度笑いが爆発した。
この席には、炊事夫の並木《なみき》夫婦《ふうふ》や、給仕の河瀬も加わっていて、みんなそれぞれに何か一芸をやった。最後に、次郎と朝倉先生夫妻の三人だけが残されていた。
「本田さん、まってました。」
「先生、お願いします。」
「小母《おば》さんも、どうぞ。」
塾生たちがほうぼうから叫《さけ》び、拍手《はくしゅ》が何度も鳴りひびいた。
いつもなら、次郎がすぐ立ちあがって何かやるところだったが、今日は変に立ちしぶっていた。すると、朝倉先生が、急にいずまいを正し、謡曲《ようきょく》でもやりだしそうな姿勢になった。みんなは急にしんとなって、片唾《かたず》をのんだ。
「猛虎《もうこ》一声、山月高し――」
朗
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