十分明るくなっており、ほのかな紅をさえとかしていた。
 だれの顔にも、何かしら、ゆうべとはちがった感情が流れており、互礼《ごれい》をすまして広間を出て行く時のみんなの足音も、これまでになく静粛《せいしゅく》だった。
 七時の朝食までには、まだ二十分ほどの時間があり、その間に食事当番は食卓《しょくたく》の準備をやり、そのほかのものは、自由に新聞に目をとおしたり、私用をたしたりするのだった。次郎は、いつもなら、こんな時間にも、できるだけ塾生たちに接触《せっしょく》して、かれらの感想をきいたりするのだったが、今日は、広間を出るとすぐ、塾長室に行き、朝倉先生に向かって、なじるように言った。
「先生は、ぼくのやりそこないを、どうしてあからさまに話してくださらなかったんですか。」
「板木《ばんぎ》のことか。あれは、私が直接見ていたわけではなかったのだからね。」
「しかし、ぼくから先生にそう申しておいたんじゃありませんか。」
「うむ。それはきいた。しかし、私が何もかも知っていたことにすると、君の名前だけでなく、大河の名前も出さなければならなくなるんでね。」
「出してくだすってもいいじゃありませんか。
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