きる生活をやろうというんだから、こんなやさしいことはない、とも言えると思うがね。」
「しかし、常識をはたらかせると言っても、ふまじめではこまるんでしょう。」
「そりゃあむろんさ。まごころのこもった常識でなくちゃあ――」
「そのまごころのこもった常識というのが容易ではないとぼくは思うんです。常識的な、平凡《へいぼん》なことをやる時ほど、人間はふまじめになりがちなものですから。」
「うむ。」
と、朝倉先生は大きくうなずいて、
「たしかに、君の言うとおりだ。その点では、ここの生活は非常にむずかしい。これまで、鍛練というと、とかく常識はずれのことばかりが考えられて、まともな日常生活に必要な常識を、まごころをこめてはたらかすための鍛練ということは、ほとんど忘れられていたようだが、実は、一ばんたいせつで、しかも一ばんむずかしいのは、そうした鍛練なんだ。そのたいせつでむずかしい鍛練を、これから君らおたがいの間でやってもらおうというのが、ここの生活の目的なんだから、そういう意味で、君がここの生活をむずかしいと言ったのは、ほんとうだ。しかし、そこに気がついて、そのつもりで努力する気になってさえもらえば
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