何かと風当たりが強くなるかもしれませんよ。そのうち、憲兵なんていう、招かれざるお客もたずねて来るでしょう。ご迷惑《めいわく》ですね。」
 と、冗談めかしていい、朝倉先生と二人で、声をたてて笑ったそうである。

   五 最初の懇談会《こんだんかい》

「何だか、だらしがないね。やっぱり自由主義的だよ。」
 次郎が、夕食後、小用をたしたかえりに第一室の前を通りかかると、中から、すこししゃがれた声で、そんな言葉がきこえて来た。かれは思わず立ちどまって耳をすました。
「探検だなんていうから、よほどめずらしい設備でもあるのかと思うと、何もありゃあしないじゃないか。このぐらいの設備なら、どこの青年道場にだってあるよ。」

 同じ声である。次郎は自分の印象に残っている室員の顔の中から、声の主をさがしてみたが、まるで見当がつかなかった。
「そりゃあ、そうだね。」
 と、ちがった声が相づちをうった。それはしかし、大して気乗りのした相づちだとは思えなかった。すると、また、しゃがれた声が、
「探検だの、室ごとの相談だの、まったく時間の浪費《ろうひ》だよ。塾生活《じゅくせいかつ》の設計だなんていったって、は
前へ 次へ
全436ページ中132ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング