の精神なのだから、それを忘れないで、各室で仲よく、しかも活発に頭をはたらかして、夕食後の集まりまでの時間を十分に生かしてもらいたい。」
次郎の眼は、その話の間にも、注意ぶかく塾生たちの顔に注がれ、その動きからたえす何かを読もうとしていた。とりわけ大河無門はかれの注目の的だった。しかし、どの顔にも、これといって変わった表情は見られなかった。大河無門の近眼鏡の奥《おく》に光っている大きな眼は、特異な眼ではあったが、それもふだんと変わった表情をしているとは思えなかった。みんなは、ただかしこまって朝倉先生の言葉をきいているというにすぎないらしかった。
次郎の張りつめていた注意力は、いくらか拍子抜《ひようしぬ》けの気味だった。
かれはその日、田沼先生とふたたび顔をあわせる機会がなかった。塾生たちの「探検」の案内をしている最中に、先生が帰って行ってしまったので、見おくることもできなかったのである。朝倉夫人が、あとでかれに話したところによると、先生は、玄関を出がけに、
「友愛塾の関係者も、今日は軍から正式に自由主義者のレッテルをはられたわけですね。奥さんもその有力なメンバーですから、これからは
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