からないよ。」
 次郎はやはり眼をふせたまま、
「ぼく、さっきからそんなようなことを考えていたところなんです。」
「そうか。うむ。」
 と、田沼先生は大きくうなずいたが、
「しかし、理屈《りくつ》ではわかっていても、実際問題となると、またべつだからね。せいぜい自重《じちょう》してくれたまえ。今の日本では、青年たちは、何といったって、軍からの影響《えいきょう》を最も多く受けやすいし、そう簡単にはわれわれのいうことを受け付けないだろう。そんな場合に、あんまりあせって、塾生とにらみあいのような形になっては、友愛塾も台なしだよ。」
 塾生とにらみあう。――そんなことは、次郎がこれまで夢《ゆめ》にも考えたことのないことだった。しかし、幼年時代からの闘争心《とうそうしん》が、今でも折にふれて鼬《いたち》のように顔をのぞかせる自分を省《かえり》みると、今度の場合、それが全く起こり得ないことでもないような気がして胸苦しかった。
「ぼく、先生にご心配をかけないように、気をつけます。」
 かれは、やっとそれだけいって、田沼先生の顔を見た。田沼先生もかれの顔をみつめて、かるくうなずいたが、その眼は、仏《ほと
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