し、午後集まったら、さっそく、ご存じの『探検』にとりかからしたいと思っています。」
鈴田はすぐもとの位置にもどった。そして荒田老と平木中佐を相手に、何か小声で話しながら、おりおり横目で朝倉先生のほうを見たり、にやにや笑ったりしていたが、まもなく、荒田老の手をとって立ちあがった。すると平木中佐も立ちあがった。
三人の自動車が玄関をはなれると、ほかの来賓たちの話し声は、急に解放されたようににぎやかになった。しかし、話の内容は決して愉快《ゆかい》なものではなかった。塾の将来に対する憂慮《ゆうりょ》や、理事長と塾長に対する同情と激励《げきれい》の言葉が、ほとんどそのすべてであった。そして、具体的対策については、何一つ示唆《しさ》が与えられないまま、それから二十分ばかりの間に、来賓たちの姿もつぎつぎに消えて行った。
田沼理事長だけは、今日はめずらしくゆっくりしていた。そして、来賓たちを送り出すと、すぐ、朝倉先生と二人で塾長室にはいって行った。
次郎は、一人になると、急にほっとしたような、それでいて何か固いものを胸の中におしこまれたような、変な気持ちになり、もう一度広間にはいって、窓により
前へ
次へ
全436ページ中120ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング