それだけに、かれは、朝倉先生が、なぜそのことをいって荒田老を説き伏《ふ》せようとしないのだろうと、それが不思議にも、もどかしくも思えてならないのだった。
塾生たちは、もうそのころには、とうに食事を終わっていた。来賓もほとんど全部|箸《はし》をおろしており、まだすんでいないのは、目が不自由なうえに、何かと議論を吹《ふ》きかけていた荒田老と、その相手になっていた朝倉先生ぐらいなものであった。しかし、この二人も、話をやめると間もなく箸をおろした。
来賓たちは、畳敷《たたみじ》きの広間のガラス窓いっぱいに、あたたかい陽《ひ》がさしこんでいるのが気に入ったらしく、食事がすんで塾生たちが退散したあとでも、窓ぎわに集まって、たばこを吸い、雑談をまじえた。そのうちに荒田老に付《つ》き添《そ》っていた鈴田が、平木中佐と何かしめしあわせたあと、朝倉先生の近くによって来てたずねた。
「今日も、午後は例のとおり懇談会をおやりになるんですか。」
「ええ、その予定です。しかし今日は、懇談らしい懇談にはいるのはおそらく夜になるでしょう。私から前もっていっておきたいことは、今日はもう大体、式場で話してしまいました
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