ろを見せるのは辛すぎるからだともいえるんです。油断はなりません。」
 田沼先生がそう言って笑った。それでまた来賓たちも笑ったが、今度は救われたといったような笑い方であった。平木中佐と鈴田とは変に頬をこわばらせていた。荒田老は相変わらず無表情だったが、無表情のまま、
「田沼さんは、やはり逃《に》げるのがうまい。まるで鰻《うなぎ》のようですな。」
 もう一度笑いが爆発《ばくはつ》した。しかしだれの笑い声も、いかにも苦しそうだった。
「荒田さんにあっちゃあ、かないませんな。」
 と、田沼先生は、そのゆたかな頬をいくらか赤らめて苦笑したが、そのあと、話題をかえるつもりか、急に思い出したように言った。
「それはそうと、荒田さんは、このごろは禅《ぜん》のほうはいかがです。相変わらずおやりになっていらっしゃいますか。」
「ふっふっふっ。」
 と、荒田老は、あざけるように鼻で笑ったが、
「禅は私の生活ですからな。毎日ですよ。」
「毎日だと、おかよいになるのが大変でしょう。このごろは、どちらのお寺で?」
「すわるのに寺はいりませんな。」
「すると、お宅で?」
「うちでもやりますし、どこででもやります。こ
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