して、そんなことが出来るはずがない。自分は、ただ一途に先生の留任を目あてに、血書を書いたりして一所懸命になっているが、先生にしてみると、落ちつくところは最初からはっきりきまっていたのだ。自分はただストライキに口火を与えるために、そして先生の最後に泥を塗るためにあの血書を書いたのではなかったのか。
 そう考えると、「かわいそうに」という先生の言葉の意味は、これまで考えたのとはまるでちがったものになって来た。先生は、その言葉に何もとくべつな意味をもたせようとされたのではない。ただ先生のはっきりしたご決意と自分に対する愛情とが結びついて、何の作為《さくい》もなくそんな言葉となってあらわれたまでだ。それにしても、先生のそのご決意について、自分がこれまで一度も考えてみようとさえしなかったということは、何という愚かさだったろう。先生が自分をどう考えていられようと、その意味で、自分はたしかに己を知らない飛びあがり者だったにちがいないのだ! 次郎の自己反省は、昨日以来、こんなふうに次第に深まって行くばかりだった。「かわいそうに」という言葉を、先生のごく自然な愛情の言葉だと思えば思うほど、それが深まって
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