つものではなかった。彼はそのあと二階にねころんで、ひとりでいろいろと考えてみた。言葉がありふれた簡単なものだっただけに、かえって意味がつかみにくかった。もしそれが世間普通の人の口をもれた言葉だったら、血を流した自分に対する同情の言葉とも解されようし、また県当局という大きな相手を向こうにまわしたことに対するあわれみの言葉とも解されよう。しかし朝倉先生がそんな甘いお座なりを言われようはずがない。先生の愛情はもっと深いのだ。先生の言葉の奥にはいつもきびしさがある。われわれの心をむち打って一歩前進せしめないではおかないきびしさがある。先生はあるいは自分を始末に負えない飛びあがり者だと思われたかもしれない。「かわいそうに、己を知らないのにもほどがある!」それが先生のお気持だったのではあるまいか。
そこまで考えて来た時に、ふと、隙間風のようにつめたく彼の頭をよぎったものがあった。それは、自分たちの運動が幸いに成功して、どうなり県当局の意志を動かし得たとして、先生は果して留任を肯《がえん》じられるだろうか、という疑問であった。この疑問は彼をほとんど絶望に近い気持にさそいこんで行った。先生のお気質と
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