られるようになったが、これはいいことだろうか悪いことだろうかとか、それが警察や憲兵隊の意志によったものだとすれば、恐らく結果は悲観的だろうとか、いや、警察や憲兵隊までが気にやむぐらいだから、却《かえ》って有望かも知れないとか、そういったことをしきりに話しあったが、次郎はただ道づれをしているというだけで、ほとんど合槌《あいづち》さえうたなかった。そして、二人に、「気分でもわるいんじゃないか。」と心配されながら別れたが、それから二丁ほどの街角まで来ると、彼は急に立ちどまって考えこんだ。街角を左にまがって少し行ったところに朝倉先生の家があるのである。
「朝倉先生が待っておいでだ。」――昨日父にそう言われたことが、彼には一日気にかかっていた。しかし、なお一層気にかかっていたのは、血書を書いた自分のことを先生が「かわいそうに」と言われたということだった。最初この言葉を父の口をとおしてきいた時には、それがあまりにも予期しない言葉だったために、ただ面くらっただけだった。しかし、彼にとって、朝倉先生の言葉は、とりわけそれが彼自身のことに関して発せられた場合、どんな片言|隻句《せきく》でも、軽い意味をも
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