彼は、しかし、それからも、校内を方々歩きまわって、上級の生徒たちが幾人かかたまって話しているのを見つけては、その仲間に入り、それとなくストライキを煽動するようなことを言ったり、次郎をけなしたりすることを忘れなかった。
 その日、校長は県庁に行ったきり、ついに学校に顔を見せなかった。西山教頭が何度も電話口に呼び出され、ひるすぎには、五年全部の学籍簿《がくせきぼ》を抱えて県庁に出かけた。ということが、給仕の口から生徒たちに伝えられた。生徒たちには、それが何を意味するかは、さっぱりわからなかった。それだけに、不安な空気はひけ時が近づくにつれ、次第に濃《こ》くなって行った。
 それでも、その日は、森川の教員適性審査以上に大した出来事もなく、ひけ時から二十分もたつと、校内には生徒の姿は一人も見られなくなった。ただ先生たちだけが校長の帰りをまつために居残っていたが、もう話の種もつきたらしく、どの先生も、いかにも所在《しょざい》なさそうな、それでいて何となく落着きのない眼をして、教員室を出たりはいったりしていた。
 次郎は、新賀や梅本といっしょに校門を出た。新智と梅本とは、案外早く血書が県庁に届け
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