かし、その眉の濃い、面長な顔をまっすぐ立てたまま、冷然としている。
「きょうは座長は田上がやれ!」
 一番うしろの方で誰かが叫んだ。
「いや、僕はやらん。会議の進行は平尾に任してあるんだ。きょうは自由な立場でものを言う約束なんだよ。」
「じゃあ、平尾、さっさと座長席につけ!」
 新賀がどなった。平尾はひきつった頬に強いて微笑をうかべながら教壇に上った。そして教卓を前にして椅子に腰をおろすと、
「じゃあ、誰からでもいいから、意見を言ってくれたまえ。」
「意見を言うまえに質問があるんだ。君は、さっき、朝倉先生のお気持がどうだとか言っていたが、そのお気持というのが、君にはわかっているのか。もしわかっているなら、はっきりそれを言ってもらいたいね。」
 そう言ったのは梅本だった。奥に何かありそうなその質問の調子が、みんなの注意を彼にひきつけた。
「朝倉先生は、生徒がさわぐのを非常に心配していられるんだ。」
「さわぐというと?」
「例えば留任運動といったようなことをやることだよ。」
「どんな方法でやってもいけない、と言われるんだね。」
「そうだ。自分の進退《しんたい》は自分できめると言われるんだ。
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