」
平尾は、ここだとばかり力をこめて答えた。梅本は、しかし、それをきき流すように、
「ところで、それは君が直接朝倉先生にきいたことかね。」
「むろんだ。」
「いつきいたんだ。」
「実はきのう、先生をおたずねしてみたんだよ。」
「君ひとりで?」
「うむ。」
「何のためにおたずねしたんだ。」
「きょうの会議をやるのに参考になるだろうと思ったからさ。」
「すると、きょうの会議のことを先生に話したんだね。」
「話したさ。それを話さなくちゃ、先生のお考えがわからないんだから。」
「先生のお考えなら、話さなくてもわかりきっているとは思わなかったのか。」
平尾は行きづまって、その狸のような口をいやに固く結んだ。
「平尾君!」
と、梅本は、いつも弁論会の時にやるように、こぶしで自分の前の机を一つたたいて、
「君は、きょうはこの会議の座長たる資格はない! 田上君と代りたまえ。」
みんなの視線が一せいに梅本に集まった。平尾もさすがにきっとなって、
「座長たる資格がない? それはどういう理由だ。」
「われわれは、先生を侮辱した人間を座長にして、先生のことを相談することは出来ないんだ。」
「僕が先生を
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