くものが言えんからね。」
「いやなやつだね。それで朝倉先生をおたずねしたってこと、平尾が自分で君に話したんかい。」
「ううん、田上にきいたんだ。」
 田上というのはもうひとりの総務である。
「田上はいったい、どうなんだ。やっぱり不賛成なのか。」
「いや、あいつは大丈夫だ。平尾のやり方に憤慨して僕にその話をしたぐらいだからね。」
「そうか。しかし総務の二人がそんなふうに対立しているとすると、今日の会議はどうなるんだい。やるにはやるだろうね。」
「そりゃあ、やるとも。もう田上が各部につたえてまわっているはずだ。」
「しかし、総務として、どんなふうに提案するつもりなんだろう。」
「むろん、総務案なんてものはないだろう。田上の話では、白紙でのぞむよりほかないと言っていたよ。」
 次郎はちょっと考えていたが、
「しかし、会議を開きさえすれば何とかなるね。」
「そりゃなるとも。平尾なんか問題でないさ。梅本も、平尾ぐらいおれに任しとけって、そう言っていたよ。……ところで、どうしたい、血書は? もう書いたんか。」
「うむ、書いた。」
 次郎は笑いながら、紙を巻きつけた左手のくすり指を新賀のまえにつき出
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