あいう先生には、ミケラシゼロの鑿《のみ》の必要もないというわけだね。ははは。しかし、あの先生は実際いい先生だ。おまえも気持よく学校にお別れが出来て、仕合わせだったよ。」
「父さんは校長にも会ったんですか。」
「うむ、会った。西山教頭や曾根少佐にもあったよ。」
 俊亮はべつに校長室の様子をくわしく話しはしなかった。彼はただ笑いながら、
「父さんには、ミケランゼロの鑿なんて、とても使えんよ。下手すると、女神どころが悪魔が出て来そうだからね。むずかしいもんだ。まあ、しかし、父さんの鑿も、まるで役に立たなかったわけではあるまい。あてた鑿のあとだけは、どこかに残っているだろうからね。」
 二人ははればれとした気持になって、校門を遠ざかった。次郎はうしろをふりかえって見ようともしなかった。そしていつの間にか町をぬけ土手にさしかかっていた。しかし、一心橋のたもとまで来ると、次郎は急に馬田との一件を思いおこして、不愉快になった。自分が退学したあとの学校の行きかえりのことまでが気になって来たのである。
「父さん、水をあびて帰りましょうか。」
「うむ、よかろう。」
 二人は馬の水飼場に来ると、着物をぬいで
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