すが、それはまあそうだとしても、しかし、ご用心なすった方がいいでしょう。何といっても大事なのは、根柢になる思想ですからね。それが間ちがっていたのでは、――」
「ありがとう存じます。しかし、思想の点では今のところ大丈夫だと信じています。」
「さあ、それが――」
「いや、それだけはご安心が願えるかと思います。私がこれまで見て来ましたところでは、次郎はあくまでも国家の道義のために仂きたい、不正な権力に対しては身を捨てても戦いたい、と、そういった考えでいるようですから。」
曾根少佐の長いひげがびりびりとふるえた。俊亮は平然として、
「とくに最近は、そういう考えが固い信念のようになって来たようです。それは多分朝倉先生のご感化だと思いますが、しかし、今度の事件で、実際問題にぶっつかって鍛《きた》えられたということが非常によかったと思います。その点で、私は、朝倉先生だけでなく、そういう機会を次郎にお与え下すった皆さんに、深くお礼を申さなければならないと思っています。」
俊亮の調子には、微塵《みじん》も皮肉らしいところがなかった。悠然というか、淡々というか、まるで表情のない顔付をして、ごくあたりま
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