まれて行くのを感じた。運命は、彼の魂《たましい》のよりどころであった朝倉先生を彼から奪いとったその日に、そして、永い間彼が情熱を傾けて来た学窓生活から彼を逐《お》い出そうとおびやかしはじめたその日に、彼にはっきりと恋を意識させ、しかもその恋の空しいことを意識させたのである。
 次郎の視線は力なく道江の顔をはなれた。彼はその視線を一たんは恭一の方に向けかえようとしたが、それは、彼自身でも意識しない心の底のある波動にさまたげられて、畳の上に落ちてしまった。
「次郎さん、やけになったりしちゃあつまりませんわ。お父さんに早くご相談なすったらどう?……ねえ、恭一さん。」
 道江が、まだぬれている眼を恭一の方に向けながら言った。
 恭一は、しかし、道江には答えないで、しばらく考えたあと、次郎に言った。
「どうだい、父さんにお願いして、今日のうちに曾根少佐のうちに行ってもらっては。」
「曾根少佐のうちに? 父さんが? 何しに行くんだい。」
「あやまりにさ。」
「ばかいってらあ。」
 次郎はどなりつけるように言って、鋭い眼を恭一にむけた。が、すぐその眼をおとして、
「あやまる必要があれば、僕が自分であ
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