やまるんだ。」
彼は、父がまだ酒屋をしていたころ、自分の無思慮な行為のために、父といっしょに春月亭の内儀にあやまりに行った時のことを思いおこしていた。しかし、曾根少佐に対してとった自分の態度が、あの時のような無思慮なものであったとは、どうしても思えなかったのである。
「じゃあ、自分であやまりに行ったら、どうだい。」
「あやまる必要があるんかい。」
「あるよ。」
「何をあやまるんだい。僕の言ったことは間違っていましたって、あやまるんかい。」
次郎の調子はいかにも皮肉だった。口もとにはかすかな冷笑さえ浮かんでいた。
「問答の内容じゃないよ。いけなかったのは君の態度だよ。」
「僕は乱暴な態度に出た覚《おぼ》えはないんだ。帰りには、きちんと敬礼もして出て来たんだ。」
次郎は、そんなことを言う自分が内心恥ずかしかった。しかし、なぜかあとへは引かれない気持だった。
「敬礼ばかりしたって、口で失礼なことを言やあ、駄目さ。権力で圧迫するなんて、真正面から生徒に言われたら、どんな先生だって怒るよ。」
「しかし、それが本当だから仕方がないじゃないか。ほんとうのことを言われて、それを失礼だと思うなら、
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