彼は歩く元気さえなくなり、土手にたどりつくと松かげの熊笹の上にごろりと身を横たえた。そしてじっと青空に眼をこらしたが、その青空からも、朝倉先生の険しい眼が彼を見つめていたのだった。

    一四 残された問題

 次郎は、それから小一時間もたって家に帰って来たが、二階では、大沢、恭一、俊三、それに道江の四人が、額をあつめるようにして、何か話しあっていた。
 次郎があがって行くと、四人は急に話をやめ、一せいに彼の顔を見た。彼は直感的に、四人がそれまで自分のことを話していたにちがいない、という気がした。そして、つっ立ったまま、ほんの一二秒彼らの顔を見くらべたが、道江の眼に出っくわすと、てれくさそうに視線をそらし、默って俊三と大沢の間にわりこんだ。大沢の左に恭一が居り、恭一と俊三との間に道江がいたのである。
 誰もしばらくは口をきくものがなかった。四人は次郎の顔をのぞくようにして、彼が何か言い出すのを待っているかのようだった。次郎はいよいよ変な気がした。
「どうだった?」
 大沢がとうとう口をきった。
「え?」
 と、次郎はけげんそうな顔をしている。
「配属将校に呼ばれたんだろう。」

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