るような気がしたが、素直に立ち上ってお辞儀をした。お辞儀をしながら見た少佐夫人の顔には白粉がこってり塗られており、まるっこい鼻の頭には脂《あぶら》が浮いていた。
「何かたべるものを持って来いよ。」
「ええ、すぐ。」
夫人が二人にサイダーをついだあと引っこむと、少佐はいかにも得意そうに言った。
「家内は兵隊を非常に可愛がる方だが、兵隊よりは学生の方がもっと好きらしいんだ。わしが配属将校になったんで大喜びさ。」
次郎は不愉快になるばかりだった。やはり学校の方に行けばよかったと思った。で、ついでもらったサイダーにも口をつけず、むっつりしていた。
そのあと、夫人が何度も出はいりして、羊かんやら西瓜やらを運んで来たが、そのたびごとに、少佐は、これまでに訪ねて来た生徒たちの噂をもち出して、夫人との間に冗談まじりの会話をとりかわすのだった。それは、いかにも自分たちが生徒に親しまれているのを次郎に示したがっているかのようであった。その中にはこんな対話もあった。
「しかし、こないだの鋤焼《すきやき》会には弱ったね、暑くて。」
「ほんとに、八畳の間に三つも七輪を置いたんですもの。生徒さんて、夏も冬も
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