ておく必要がある。それには自宅に行ってゆっくり話す方がいいのかも知れない。そんな気むした。彼は、そうした考え方に何か不純なものを感じながらも、つい答えてしまった。
「お宅がそんなに近いなら、行ってもいいんです。」
「来てくれるか。」
 少佐は歯をむき出してにやりと笑った。そして、
「それがいいんだ。それがいいんだ。なあにたいていのことは固くならないで話しあってみれば、わけなく解決することなんだよ。それが学校でだと、お互いにそうはいかんのでね。」
 と、先に立って街角をまがった。
 少佐の住居は、古風なこの町の建物にしては珍らしく洋間のついた家だった。次郎はすぐその洋間に通された。彼は個人の家の洋間などまだ一度も中にはいって見た経験がなかったので、ちょっとまごついた。入口に棒立になって室内を見まわしていると、少佐は上衣をぬいで長椅子にほうり投げながら言った。
「窓ぎわがすずしくていい。その籐《とう》椅子にかけたまえ。」
 それから、奥の方に向かって、
「おうい、学校の生徒さんだ。何かつめたいものを持ってこい。」
 と、大声で叫んだ。
 次郎は言われるままに少佐と向きあって籐椅子にかけたが
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