次郎は少佐がまだ言葉をきらないうちに答えた。
「そうか、しかし、学校だと、今からじゃかえって目立つぞ。」
「目立ってはわるいんですか。」
「わしはかまわんが、君が……」
「僕もかまわんです。」
次郎は何かやけくそなような気持になって答えた。
「そうか、じゃあ、学校に行こう。」
二人は待合室を出た。一丁ほど、どちらからも口をきかないで歩いていたが、少佐はすぐ近くの街角を指さしながら、
「わしの家は、あれからはいって五分ほどのところだがね。どうだい、わざわざ学校まで行かんでも、わしの家に来ては。学校ではもうお茶ものめんし、それに今頃は小使が職員室を掃除しているころだろう。」
次郎は、少佐が何で自分をそれほど自宅につれて行きたがるのか、わからなかった。それには何かいやしい魂胆《こんたん》があるのではないかと思った。で、是が非でも学校に引きかえしたいという気でいた。しかし、また一方では、皮肉とも好奇心ともつかぬ一種の感情がうごいていた。それに、自分がもし近い将来に、学校革新のために戦う機会が来るとすれば、少佐が何を考え、何を生徒に要求しようとしているのか、その本心を出来るだけくわしく知っ
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