んなものではない。先生の眼が、そんなことで、あんなにつめたく、あんなに険しくなろうとは、とうてい想像も出来ないことなのだ。
ではあの眼は何を意味する眼だったのか。――彼は急に、あの時の自分の仕草を省みて、ひやりとした。
飛びあがりもの! ただ自分を眼立たせたいためばかりに、ひとり列をはなれて軽業師のような真似をしていた飛びあがりもの! そんなことは、馬田のような生徒でもめったにやらないことではないか。白鳥会員として自分はいったいこれまで何をして来たのだ。ご本尊の朝倉先生のお見送りをするというのに、このざまはいったいどうしたことなのだ。
彼はそう考えて、自分が今何のために待合室のベンチに腰をおろしているのかさえ忘れていた。
すると、うしろから軽く彼の肩をたたいたものがあった。はっとしてふりかえると、曾根少佐が、その大きな口に真白な前歯を見せて立っていた。
「きょうはどうしても君にたずねて置かなくちゃならんことがある。しかし、こんなところでは工合がわるい。もう一度学校に引きかえしてもらうか、それとも、わしの家に来てもらうか、どちらでもいいんだが……」
「学校の方がいいんです。」
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