ついたからであった。
曾根少佐は馬田たちと話しながら、眼だけはたえず次郎の方に注いでいるらしかった。次郎は、まだその時まで左手ににぎったままでいた手拭を、あらためて腰にさげ、帽子をかぶって、服装をととのえたあと、曾根少佐の方に近づいて挙手の礼をした。少佐はすぐに答礼したが、いつもの歯をむき出したあいそ笑いはしなかった。そして次郎がそばを通りぬけようとすると、
「あっ、本田、ちょっと待合室で待っていてくれないか。用があるんだ。今すぐ行くからね。」
と、いかにも急に用事を思い出したかのような調子で言った。
次郎は、不快というよりか、何か不潔な感じがした。しかし、強いてこばむことも出来ず、すぐ待合室に行って空いた席に腰をおろした。
腰をおろした彼は、曾根少佐の用事はいったい何だろうと考えた。馬田との立ち話もいくらか気になった。しかし、そんなことよりも彼にとって大事だったのは、朝倉先生の最後の眼だった。その眼がすべてを押しのけて、彼の眼底にちらつき出した。
険しい眼だった。朝倉先生の眼とは思えないほどつめたい、険しい眼だった。それは訣別《けつべつ》の悲哀を物語る眼だったのか。断じてそ
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