の予期したものとは全くちがった眼であったとしても、いや、ちがった眼であればあるほど、それを最後まで凝視することが、いまは彼の宿命ともいうべきものだったのである。
 先生の眼は次第に遠ざかった。険しい眼なのか、温かい眼なのか、そしてその視線がどこに注がれているのかさえ、もうまるで判別がつかないほど遠ざかった。けれども、次郎の眼は一心にそれを追った。
 最後に次郎は、男の顔とも女の顔とも見わけのつかない二つの顔が、線路のゆるやかなカーヴのうえで次第にかすめ取られ、ついに全く消えうせたのを見た。
 彼は、それでも、まだ、茫然《ぼうぜん》として列車のあとを見おくっていた。帽子と手拭とをにぎっていた彼の両手は、もう、だらりと柵の上にたれていた。
 彼が柵をおりたのは、列挙が町はずれの小さな鉄橋を渡りおえて全くその影を没してから、大方二分近くもたったあとのことであった。
 生徒たちの群は、もうその時にはほとんど散っていた。そして、がらんとなった空地に、配属将校の曾根少佐が、四五人の生徒を相手に何か立ち話をしていた。次郎は見たくないものを見たような気がした。それは、生徒の一人が馬田だということに気が
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