姿勢になった。それは生徒の中のよほどの飛びあがりものででもなければやらない仕草だった。生徒たちは、それを見てやんやとはやし立てた。彼は、しかし、生徒たちのさわぎにはまるで気がついていないかのように、ただ一心に列車の方を見つめていた。
 列車はまもなく発車した。
 機関車が生徒たちのまえを通るころは、速力はまだごくのろかった。しかし、客車が二台三台と通るにつれて、それは次第にまして行った。次郎がつぎつぎに近づいて来る客車の窓を注意ぶかく見つめていると、五台目の中ほどの窓から、あわてたように上半身を乗り出した人があった。それはまぎれもなく朝倉先生だった。そしてその同じ窓から、夫人も窮屈そうに、顔だけをのぞかせていた。
 次郎は夢中になって帽子と手拭をふった。列車はもうかなりの速度を出していたので、先生夫妻の顔が生徒たちの並んでいるまえを通るのはすぐだった。二人は何度も何度も顔をあげさげして、生徒たちに会釈《えしゃく》した。しかし、一人はなれている次郎には、まだ気がついていないらしい。
「先生!」
 次郎は二人の顔が自分の直前に来る少しまえに、たまりかねたように叫んだ。それも、しかし、車輪の
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