とではございますまいか。私は次郎さんのこのお歌を拝見いたしました時に、はっとそのことに気がついたのでございます。自分を忘れることの出来ない自分の醜《みにく》さに、悩みを感じないでは、白鳥会の精神も何もあったものではないと、そう思いまして、私がそれまで、あんまりいい気な人間であったことに、はっきり気がついたのでございます。そのあと、私は何かにつけ、次郎さんのこのお歌を、良寛さんのお歌といっしょに、心の中でくりかえすことにいたしております……。次郎さんの秘密のお歌をすっぱぬいて、おてんばをするつもりなのが、つい自分のざんげ話のようなことになりまして、まため入りそうな気持になってまいりました。これで失礼さしていただきます。」
 みんなの視線は、夫人と次郎とに半々にそそがれていた。そしてやや間をおいて思い出したように拍手が起った。次郎はあごを胸にめりこませるようにして顔を伏せていた。
 そのあと、大沢の音頭で座をくずし、みんな窓の近くによって、月を見ながら雑談することにした。
 月はもうかなり高かった。満月をすぎてわずかに欠けはじめた光の塊《かたまり》が、横長くひいた雲のへりを真白に光らせてそ
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