「僕は、きょう、良心の自由という言葉と人間の真実という言葉とを覚えました。僕は、これから、どんな時にも、この二つの言葉と、僕たちのために死んでくれた鶏のことを思い出したいと思います。」
 朝倉先生や俊亮をはじめ、上級の生徒たちは、いいあわしたように、その生徒の顔を見つめた。
「あの生徒はM少将の息子です。ご存じでしょう、M少将のことは。」
 朝倉先生が、そっと俊亮の耳にささやいた。俊亮はうなずいて、一層注意ぶかくその生徒の顔を見つめた。
 M少将というのは、満州事変が起る頃まで、陸軍省内に重要な地位を占めていたが、事変について省内で何か烈しく論争したため、急に予備役に編入されたという噂のある人だったのである。
 M少将の息子の発言が終ると、それまで沈默をつづけていた次郎が、急に口をきった。
「僕はいま、M君の言葉をきいたとたん、なぜか、僕がこの会に入会して間もないころの、ある夕方のことが、はっきり眼にうかんできたので、それを話すことにします。」
 そう前置きして、彼は、文庫の両側にかかっている「白鳥入芦花」の額と、良寛の歌――「いかにしてまことのみちにかなわなむちとせのなかのひとひ
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