んなの眼はいよいよ光って俊亮の方に注がれ、恭一と次郎とはまるで罪人のように顔をふせた。俊亮は相変らず泰然としている。
「私が本田君のお父さんとおちかづきになったのは、ごく最近のことで、私の今度のことが問題になってから、私の家をおたずね下すったのがはじめてだ。だから時間的にはごく短いおちかづきに過ぎない。しかし私は、これまで私が交わった誰よりも信頼申上げることが出来るような気がする。失礼な申しようだが、私は、もう一人の私、それもこれまでの私よりかずっと実社会に人間の真実を生かしている私を、本田君のお父さんに、見出したような気がしている。文庫の方は、取りあえずというので、諸君が見るとおり、すでにこちらにお預けしてあるんだが、私は、同時に白鳥会員としての諸君の身柄をも、こちらにお預けして、本田君のお父さんに、諸君の良心の自由を守っていただきたいと思っているのだ。本田君のお父さんには、まだはっきりしたご承諾はいただいていないが、しかし、諸君がここでお願いさえすれば、きっとご承諾下さるだろうと思う。」
先生の言葉はまだつづきそうだった。しかしそのまえに、
「是非お願いします。」
と、叫んだも
前へ
次へ
全368ページ中269ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
下村 湖人 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング