さしいことではないのだ。ことに君らのような純真な青年が、どこもかしこも麻酔薬《ますいやく》をふりまかれているようなこれからの時代に、それを守ることは、容易ではない。いったい、良心がその自由を失うというのには二つの場合がある。その一つは、権力におもねったり、大衆にこびたり利害にまどわされたりして、心の底では悪いと知りつつ良心にそむく行動をする場合であり、もう一つは、知性を曇《くも》らされ、判断力をにぶらされて、自分ではべつに悪いことをしているつもりでなく、むしろ良心的なつもりで、とんでもない間違った行動をする場合だ。諸君は第一の場合のような意味で良心の自由を失うことはよもやあるまいと思う。それは信じてもいいと私は思っている。しかし安心出来ないのは第二の場合だ。国家のためだ、などと誰かが声を大きくしてどなると、諸君のような純真な青年は無反省にすぐそれに共鳴したがる。それが良心をねむらす麻酔薬の一滴であっても、それにはなかなか気がつかない。今の時代がじりじりと悪くなって行くのは、実にそうした煽動家のどなり声に原因がある場合が非常に多いのだが、却ってそれを憂国の叫びだと思いこんでしまう。また、
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