だけがいやにきわ立って新しく見えた。
 朝倉先生は、いつもの部屋で次郎を迎えたが、そこには、これまで二階の白鳥会の読書室にあった大きなテーブルがすえてあり、そのまわりに座ぶとんが二三枚しいてあるきりだった。次郎がはいって来るまで、先生はひとりで読書していたらしく、王陽明の伝習録がテーブルの上にふせてあった。
「やっと発表になったよ。」
 次郎を見ると、先生はすぐそう言って笑った。次郎は、お辞儀をしたきり、顔をふせてだまっていた。玄関をあがってここまで来る間に見た家の中の光景が、彼の気持をはげしくゆすぶっていたのである。
「掲示はもう出たのかい。」
「はい。」
「とにかく変なさわぎにならなくてよかったね。」
「はい。」
「君に大変骨を折って貰ったそうで、ありがとう。」
 次郎はやっとまともに先生の顔を見た。先生もまともに次郎を見ていた。深く澄んだ眼の底から、愛情が白百合のように匂って来るのを感じながら、次郎はたずねた。
「僕たちのやっていたこと、先生にもわかっていたんですか。」
「わかっていたよ、あらましのことは。」
「どうしておわかりだったんです。だれか生徒がおたずねしたんですか。」

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