、返事をしぶっていた。
すると大山は、また眼をぱちくりさせながら、
「きょうは、僕いっしょに行ってはわるいんか。そんなら、あすにするよ。僕はただあいさつするだけなんだから。――じゃあ、さよなら。」
水の流れるような自然さだった。次郎は大山のうしろ姿を見おくりながら、すまないというよりか、むしろ、うらやましいという気でいっぱいだった。そんて、なぜ今まで大山を白鳥会にさそいこまなかったろう、もし彼のような生徒がその一員に加わっていたとすれば、自分は、新賀や、梅本や、そのほかの生徒たちからは到底学ぶことの出来ないものを、これまでに学んでいたであろうのに、と思った。
一一 最後の訪問
朝倉先生の家では、奥さんが留守らしく、案内を乞うと奥の方から先生の声がきこえたので、次郎はさっさと上って行った。予想していたとおり荷造りはもうすっかりすんでいた。そしてその大部分はすでに発送されたあとらしく、いく梱《こり》かの荷が小ぢんまりと一ところに積んであり、がらんとなった部屋々々は掃除までがきれいに行きとどいていた。庭先にも藁切れ一つちらかっていない。ただ古ぼけた畳に、物を置いてあったあと
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