なことを考えながら、稽古の相手を選ぶために向こうの側の列を見た。すると正面に大山がおり、そのすぐ隣りに馬田がいた。
(よし、相手は馬田だ――)
彼は一瞬そう思った。が、同時に彼は胸にひやりとするものを感じた。
(卑怯者! それでおまえは朝倉先生の言われた剣道修行の意味がわかっているといえるのか。馬田と戦うにしても、道はべつにあるはずだ。)
間もなく稽古はじめの合図で立ちあがったが、彼が選んだ相手は、正面の大山だった。大山はそののんびりした性格どおり、太刀筋に極めて鷹揚《おうよう》なところがあった。しかし決して下手ではなかった。すきだらけのように見えて案外すきがなく、大きくふりおろす太刀先にはきびしい力がこもっていた。次郎の太刀はその俊敏さにおいて級中第一の評があり、大山のそれとはいい対照をなしていた。勝負では次郎の方にいつも勝味があったが、しかし次郎本人は、却って大山の太刀筋をうらやましくも思い尊敬もしていた。
次郎は大山を相手に選んで、救われたような気持だった。「見事に死ぬ」稽古の相手を、もし生徒の中から選ぶとすれは、それは大山だろう、という気にさえなったのだった。大山の満月の
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