よりなおわるいことだよ。馬田君は最初からストライキを予定して、しかもそれを校長排斥にもって行こうとしているが、不純にもほどがあると思うね。僕は、そんな考え方には絶対不賛成だ。むしろ僕たちは、ストライキのおそれがあったら、極力それをくいとめることに努力しなければならないんだ。それが留任運動をおこすものの義務だよ。それに――」
 と、次郎の調子は次鶉に熱をおびて来たが、急に胸がつまったように声をふるわせて、
「万一、ストライキにでもなってみたまえ。僕たちは、表面朝倉先生を慕っているように見えて、実は先生を侮辱していることになるんだよ。ストライキのような卑怯な手段で先生に留任してもらうなんて、そんな……そんなひどい侮辱を先生に与えていいと思うのか。それも、先生の辞職の理由が僕たちにわかっていなければ、まだいい。わかっていてストライキをやるなんて、あんまりひどすぎるじゃないか。」
「じゃあ、君はいったいどうしようというんだ。理くつばかり言っていないで、具体的に方法を言いたまえ。」
 馬田がきめつけるように言った。次郎は、しばらく返事をしないで、馬田の顔をじっと見つめていたが、思いきったように、
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