姿が近づくと急に散らばったり、だまりこんでしまって変に白い眼で先生の通りすぎるのを見送ったり、また中には、頓狂な声を出してみんなを笑わせたりすることが多かったし、授業時間中でも、どたばたと廊下をあるく生徒の足音が頻繁《ひんぱん》にきこえ、どの教室でも、生徒たちは茶化したような眼付をして先生の顔をのぞき、平気で私語する、といったようなふうになって来たからである。
 一般の生徒の中には、委員会の腑甲斐《ふがい》なさを真剣になって怒っているものもあった。血書の効果を一種の好奇心をもって期待していたのが、駄目だと知って緊張感を失い、急にだらけた気分になったものもあった。また中には、問題がどう片づこうと、そんなことには大した興味を持たず、ともかくもこの騒ぎで、学校や先生を馬鹿にしてもいい時節が到来したような気になり、むやみとふざけたまねをするものもあった。
 こうしたいろいろの種類の生徒たちの間に、共通の話題になったのは次郎のことであった。
「本田は軟化した。自分で血書を書いておきながら、県庁で父兄会があってからは、一所懸命でみんなをなだめにかかったそうだ。」
 そういう噂が誰いうともなく下級生
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