彼が水から首をもたげると、新賀が大声で彼を呼んでいるのがきこえた。次郎は、その時、水飼場から百メートル以上も下流にいたのである。
見ると水飼場の岩には、俊亮がふんどし一つになって立っており、こちらを向いてにこにこ笑っている。
次郎はちょっとあっけにとられた。そして急いで流れをさかのぼりかけたが、もうその時には、俊亮もざぶりと水に飛びこんでいた。
「父さん、どうしたんです。」
近づくと、次郎がたずねた。
「県庁に行ってかえりがけだよ。お前たちが泳いでいるのを見つけたもんだから、つい父さんも泳いでみたくなってね。」
俊亮はそのふっくらした真白なからだを、胸まで水にひたして答えた。
「県庁で何があったんです?」
「お前たちのことで呼び出されたのさ。」
「僕たちのことで? 県庁に?」
次郎だけでなく、新賀も梅本も眼を見はった。
「きょうはお前のおかげで、私も重要な父兄の一人になったよ。呼び出されたのは二十名ばかりだったがね。」
俊亮は笑いながら、県庁での「懇談《こんだん》」の様子をかくさず話してきかした。ただ、血書撤回のことで課長との間にとりかわした問答については、あまりくわしい
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