見つめたが、思いかえしたようにすぐ新賀の方をむいて、
「とにかく、正々堂々と恥かしくない方法でやりたいものだね。」
「そうだ、最初校長に願ってみて、いいかげんな返事しか得られなかったら、直接県庁にぶっつかるんだね。」
「校長はどうせ相手にならんよ。まるで配属将校の部下みたようなものじゃないか。」
そう言ったのは、梅本だった、すると馬田が、
「花山校長の鼻をあかすいい機会だよ。いよいよストライキになったとき、あのちょっぴりした青い鼻がどんなかっこうになるか、それを眺めるのも、はなはだ興味があるね。」
と、さかんに「はな」を連発して、ひとりで得意になった。
「ふざけるのはよせ!」
新賀が今度はなぐりつけそうなけんまくでどなった。
「僕たちはストライキをやろうとしてるんではないだろう。」
と、次郎がすぐそのあとで、表面何気ないような、しかしどこかにおさえつけるような調子をこめて言った。
「ストライキをやらないで、いったい何をやるんだ。」
馬田は、さっきからのふざけた様子とはうって変り、まるで喧嘩腰になって次郎の方に向き直った。
「留任運動をやるさ。僕たちは僕たちの真情を訴えれば、そ
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