《がま》にひげを生やしたような曾根少佐の顔とが、いつも憎々しく自分の眼にちらついている。二人の顔を思い出さないでは、自分はさっきから一言も口をきいていなかったのではないか。――
 彼はひとりでに眼を伏せた。彼の膝の周囲には熊笹の葉が入りみだれ、へしまげられている。その葉が、彼が息をするごとにかすかな音を立てて動いていた。そしてその二つ三つが、間をおいてつぎつぎにぴんとはね起きた。彼は見るともなくそれを見ていたが、ふいに顔を上げて、
「僕、何だかわけがわからなくなった。もっとゆっくり考えてみるよ。」
「うむ、僕ももっと考えてみる。」
 新賀が言うと、梅本も、
「そうだ。いそいできめることはない。おたがいによく考えてみるんだね。」
 新賀は、次郎の気をひくように、
「どうだい、水をあびようか。」
 三人はすぐ立ちあがった。次郎は裸になりながら、
「みそぎでもやるようだね。」
 と、皮肉に笑った。すると梅本が、
「みそぎはまあいいが、みたまふり[#「みたまふり」に傍点]というのは実際滑稽だそうだ。」
「みたまふり[#「みたまふり」に傍点]って何だい。」
「みそぎのあとか先かに、静坐をして眼を
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