平尾、田上、新賀、梅本、大山、そのほか、よかれあしかれ教師側の注目をひいている、おもだった生徒の父兄の名がならんでいた。そしてどの父兄の顔にも困惑の色がうかんでおり、中には、「ただ今の校長先生のお言葉の通りですと、ほかの方のことは存じませんが、私だけは、どの点から考えましても、この席につらなる資格がなさそうに思えますが、或はどなたかのまちがいではありますまいか。」と、真実不思議そうな顔をしてたずねたものもあった。みんなの中で、校長の言ったすべての条件を完全に具備している人があったとすれば、それは恐らく平尾の父だけだったろう。彼は弁護士で、次期の最も有力な市長候補だと噂されている人だったのである。
 校長の説明のあとで、まだ三十歳には間のありそうな、色の白い、いかにも才子らしい顔をした学務課長が立ちあがって言った。
「実は、先生の留任運動というようなことは、本来なら学校だけで処理していただくべき性質のものですが、何しろ、生徒からの願書が校長さんだけにあてたのでなく、知事宛にもなっていますし、なお朝倉教諭退職の理由については、県として直接皆さんの御|諒解《りょうかい》を得ておく方がいい、と
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