志は全然持っていられない。僕は、おととい先生をおたずねして、直接先生の口からそれをきいて来たんだ。」
 教室の中でも、廊下でもさわがしく私語がはじまった。
「すると、平尾君が最初主張したとおり、何もやらない方が賢明だったというのか。」
 そう言ったのは梅本だった。みんなの眼が一せいに平尾をさがした。平尾は座長席のすぐ近くの机に頬杖をついて、眼をつぶっていた。
 次郎もその方に眼をやって、ちょっと答えに躊躇したが、すぐ梅本を見て答えた。
「結果からいうとその通りだ。しかし、僕たちは願書を出したことを後悔する必要はない。願書は、僕たちの希望を表明するただ一つの手段だったんだ。結果を予想して、僕たちに残されたただ一つの手段までも捨ててしまうのは、賢明どころか、道義上のなまけ者だと僕は信ずる。」
 平尾の方にまた視線が集まった。平尾は、しかし、相変らず眼をつぶったままである。
「えらいぞ、本田。」
 と、少し間をおいて、誰かが頓狂な声で野次をとばした。つづいて、
「しかし残された手段は願書だけではないぞ!」
「そうだ! ストライキという最も有効な手段を逃げる奴こそ、道義上のなまけ者だ。」
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