山教頭はひとりで何かうなずいたが、
「いや、それほど仰しゃるなら、とにかく一応配属将校にご希望をお伝えしてみましょう。しかし、お会い願えるとしても、それはあくまでも学校の一職員としてではありませんから、その点十分おふくみ願って置きます。」
 そう言って校長室を出て行ったが、間もなく、曾根少佐といっしょに何か高笑いしながらもどって来た。
 曾根少佐は室にはいるとすぐ、
「やあ、本田次郎君のお父さんですか。」
 と、いかにもわだかまりがないといった調子で、俊亮に言葉をかけた。そして、俊亮が立ちあがって挨拶をかえしているうちに、もうどさりと椅子に膝をおろし、
「いや、今度は次郎君はまことにお気の毒な事になりました。しかし見どころのある青年ですから、心機一転すると却っていい結果になるかも知れません。」
 俊亮は、しばらくの間、まじまじと少佐の顔を見まもっていたが、
「そうでしょうか。あなたも見どころがあるとお感じでしょうか。」
 少佐は、「あなたも」と言われたのに、ちょっと変な気がしたらしく、眼をぎろりとさせたが、
「ええ、たしかに見どころはありますね。あれでもう少し思慮が深いと、こんなことにもならなかったろうし、私としては、むしろ校風|刷新《さっしん》のために、片腕になって仂いてもらいたいとさえ思っていたぐらいなんですがね。」
 俊亮は微笑しながら、
「なるほど。で、見どころと申しますと?」
「非常に気が強いところです。こうと思いこむと、なかなかあとへはひかないたちですね。」
「たしかに親の目から見てもそういう点はあります。同時に、相当思慮も深いように思いますが、そうではありますまいか。」
「いや、その点はどうも。……もっとも、かなり策士《さくし》らしい面もありますから、それを思慮深いといえば格別ですが。」
「策士?」と、俊亮はちょっと意外だといった顔をしたが、すぐうなずいて、
「いや、なるほどそういう点もたしかにありましょう。しかし、このごろでは、あまり筋のとおらない策は用いないように思いますが、いかがでしょう。朝倉先生の問題でも、初めから終りまで、一|途《ず》に筋を通そうとして細かく頭を使っていたようですし、おとといお宅にお伺いしました時も、自分の信じていることの筋を通すために、つい失礼なことも申上げましたように私には思われますが。」
 曾根少佐は、それまで多寡《たか
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