に対しても、ほとんど聞き流すような態度でいたが、おしまいに、ひょいと忘れものでも思い出したかのように言った。
「配属将校の方、曾根少佐と仰しゃいましたかね。――その方にちょっとお目にかからしていただけませんでしょうか。」
校長は鼻をぴくりと上にすべらせて、西山教頭を見た。すると、西山教頭が、
「配属将校は生徒のことでは直接責任がないんです。処分は学校としてやるんですから。」
「むろん、そうだろうと存じます。」
と、俊亮は西山教頭の方に眼をうつして、
「ですから、次郎の処分について私は配属将校の方にとやかく申そうというのではありません。」
「するとどういうご用件で?」
「次郎という人間をどうご覧になっているか、それを直接おききしたいのです。」
「それは、校長からさきほどおつたえしました通りで、あらためておききになる必要はないと存じますが。」
「私は、直接おききしたいと申上げているのです。」
「すると、校長をご信用なさらない、というわけですか。」
「信用するとか、しないとかいう問題ではありません。人の子の親として、一度、直接お会いして承《うけたまわ》っておきたいのです。」
俊亮の態度は厳然としていた。
西山教頭は、校長とちょっと眼を見あったあと、変に言葉の調子をやわらげ、
「しかし、何分、ほかの職員とはちがいますので、生徒の処分問題などで、父兄の方に直接会っていただくというようなわけには参りにくい点もありますし……」
「学校の一職員としてではなく、人間としてお会い下さるというわけには参りませんか。」
「どうも――」
と、西山教頭は、わざとらしく笑って頭をかきながら、
「そんなふうにおっしゃられると、いよいよ事が大げさになるような気もいたしますが……」
「少しも大げさになることはありません。まじめなことではありますがね。」
「どうも――」
と、西山教頭は、今度は冷笑に似た苦笑をもらした。すると、俊亮はきっとなって、
「いやしくも、次郎という一人の人間に、新しい運命、――と申しては或いは大げさになるかも知れませんが――よかれあしかれ一つの新しい方角をお与え下すった方に、親としての私が直接お会いしたいと申すのを、先生はまじめでないとお考えでしょうか。」
西山教頭の三角形の眼が急に引きしまった。校長の鼻は上にすべったきり動かない。
しばらく沈默がつづいたあと、西
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