まいだね。」
「そりゃあ、そうだ。」
と、大沢は何か考えているらしかったが、
「じゃあ、この話はもうよそう。」
次郎は、何かいやなあと味を残されたような気持だった。しかし、大沢も恭一も、それっきり静かになってしまったので、いつの間にか自分も眠りに落ちていった。
三 無計画の計画(※[#ローマ数字2、1−13−22])
それからどのくらいの時間がたったのか、次郎は、小屋のそとから誰かしきりにどなっているような声をきいて、はっと眼をさました。
「起きろっ。」
「出て来いっ。」
「ぐずぐずすると、身のためにならんぞっ。」
それは一人や二人の声ではないらしかった。次郎は、さすがに胸がどきついて、息づかいが荒くなるのをどうすることも出来なかった。彼はそっと恭一をゆすぶってみた。すると恭一は、もうとうに眼をさましていたらしく、次郎の手を握って静かにせい、と合図をした。同時に、
「僕に任しとけ。」
と、大沢の囁《ささや》く声がきこえた。
そとの人声は、しばらく戸口のところにかたまって、がやがや騒いでいたが、
「きっと、ここじゃよ。路をこっちにおりたとこまで、おらあ見届けておい
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