の知らないところにあるっていう気がするんだよ。」
「ふうむ。しかし、そうだからって、無計画の計画ばかりでもいけないだろう。」
「そりゃあ、むろんだ。今度の旅行はべつとして、何事にも計画の必要なことは、いうまでもないさ。しかし、計画には限度があるよ。いや、人間が頭でやった計画なんてものは、もっと大きな力、自然というか、神というか、そうした大きな力の発動に、あるきっかけを与えるに過ぎないんだ。それを忘れて傲慢になっちゃあいかんと思うね。」
恭一は藁の中でうなずいた。そして、いくらか冗談のように、
「君がそんなことを言い出すようになったのも、やはり無計画の計画の一つだろう。」
「たしかにそうだ。その意味でも次郎君に感謝していいね。」
次郎は、二人の言っていることが、まだはっきりのみこめなかったところへ、だしぬけに自分の名前が出たので、何か変な気がしながら、
「どうしてです。」
「つまり、君の可憐さが、僕たちのこの三四日の生命をささえて来たことになっているからさ。」
次郎は、不平を言っていいのか、喜んでいいのかわからなかった。すると恭一が言った。
「しかし、自分の可憐さを自覚したら、おし
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