したりした。
 次郎はきいていてはらはらした。近くの生徒たちの中には、可笑しさをこらえて、肱でつっつきあったりする者もあった。先生たちの顔も変にゆがんでいる。その中で、いつもと少しも変らない顔をしているのは、校長と朝倉先生だけだった。校長の眼は厳粛で、しかも温かだった。朝倉先生の眼はふかぶかと澄んで静かだった。次郎は、二人の眼を見た瞬間、何か大事なことを教えられたような気がした。彼の注意は、それから、二人の顔にすいつけられて、宝鏡先生の言葉がほとんど耳にはいらなかった。
 宝鏡先生が壇をくだると、生徒席の方から、五年生の一人が進み出て、送別の辞を述べたが、これは紋切型で、しかも一分とはかからなかった。最後に体操の先生から、宝鏡先生の出発の日取りや汽車の時刻が発表され。休暇中だからそろってお見送りは出来ない、市内の者で出来るだけお見送りするように、との注意があって、送別式はともかくも無事に済んだ。
 次郎は、何かほっとした気持で、講堂を出た。すると、新賀が彼と肩を並べながら、言った。
「どうだい、今すぐ行こうか。」
「うむ。」
 二人は、その足で、いっしょに生徒監室に行き、朝倉先生の机の
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