可愛がらなきゃあ、何にもならんよ。お祖母さんのすること、僕、もうきらいになっちゃったさ。いやぁな気持がするんだもの。」
次郎には、恭一の気持がそのままぴったりとはのみこめなかった。彼はただ、それを自分への同情の言葉として聞いただけだった。――むろん、公平ということのいかに望ましいかは、彼が彼自身の過去から、みっちり学んで来たことだった。しかし、彼の乗せられている天秤《てんびん》の皿は、恭一のそれとは、いつも反対の側にについていたのである。餓《う》えた者の求める正義と、飽いた者の求める正義とは、同じ正義でも、気持の上で大きな開きがあることは、次郎と恭一との場合だけには限られないであろう。
「そうかなあ。」
と、次郎は解《げ》せないといった調子だった。
「そうだとも。だから、僕、これからなるたけお祖母さんのそばにいないようにするよ。そして何かお祖母さんがくれたら、半分はきっと次郎ちゃんにもわけてやるよ。」
「ほんとう?」
「ほんとうさ。」
「じゃぁ僕も、正木のお祖父さんや、大巻のお祖父さんにもらったもの、恭ちゃんにわけてやるよ。」
「ああ、俊ちゃんにもね。」
「そうだい。俊ちゃんにもわ
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